更年期障害・月経前症候群など

閉経前後の女性に起こる
「更年期障害」

閉経前後の女性に起こる「更年期障害」閉経を挟んだ前後5年、おおよそ45~55歳くらいの時期を更年期と言います。エストロゲンという女性ホルモンの分泌量が急激に減少する時期でもあり、その影響でさまざまな心身の症状が現れることがあり、これを更年期障害と呼びます。
更年期障害の症状は、動悸や息切れ、ほてり、多汗、寒気、胸痛、頭痛、イライラ、抑うつ気分、肩こり・腰痛など、多岐にわたります。

エストロゲンとは

エストロゲンとはエストロゲンは、女性らしさをもたらす女性ホルモンの一種です。生殖器の発育や維持、女性の身体の丸み、肌の調子を整えるといった働きを持ちます。エストロゲンの分泌量は18歳~30代後半でもっとも多くなり、40歳頃から徐々に、閉経を境に急激に減少します。

更年期障害になる人、
ならない人の特徴

更年期障害に
なりやすい人とは?

更年期障害になりやすい性格の傾向として、以下のようなものが挙げられます。こういった性格の傾向を持つ人は、そうでない人よりもストレスが溜まりやすく、それが更年期障害の発症に影響するものと考えられます。

  • 真面目な人、努力家の人
  • 完璧主義の人、神経質な人
  • まわりに気を遣う人、空気を読む人
  • 感情を表に出すことの少ない人

更年期障害に
ならない人の割合

厚生労働省の調べによると、40~50代の女性のうち、約15%はまったく更年期障害がないとの報告がありました。また、軽い症状があったけれど日常生活に特に大きな問題がなかった人は、約50%でした。
言い換えると約50%はなんらかの症状があったということであり、女性にとって身近な存在であることに変わりありません。

自律神経を整えることがポイント

自律神経のバランスを整えることが、更年期障害の予防や改善に有効となることが分かっています。
ストレス、不規則な生活リズム、睡眠不足といったリスク因子がある方は、それらを改善し、自律神経のバランスを整えることが大切になります。

更年期障害の
症状チェックリスト

更年期障害の症状チェックリスト更年期障害の症状について紹介します。下記で当てはまるもの、気になる症状があれば当院にお気軽にご相談ください。

  • 怒りっぽい、すぐイライラする
  • 不安感がある
  • 頭痛、めまい
  • 動悸、息切れがする
  • 顔がほてる、汗をかくことが増えた
  • 眠りが浅い、寝つきが悪い
  • 常に疲労感がある
  • 手足、腰、背中が痛む

更年期障害の診断

問診

精神的・身体的症状、症状が現れた時期、既往歴、服用中の薬、生活環境、ストレスの有無などについて詳しくお伺いします。また月経の有無や状態についても、ご教示ください。

血液検査

発症にかかわる女性ホルモン、女性ホルモンの分泌に必要な脳下垂体ホルモンの値を調べます。
更年期には女性ホルモンの量の変動が激しいため、間隔をあけて2回以上、血液検査を行う必要があります。

更年期障害の治療

まずは生活習慣の改善に取り組み、必要に応じて薬物療法を導入します。

漢方薬

さまざまな生薬を組み合わせた漢方薬を処方します。
更年期障害の治療では、主に当帰芍薬散・加味逍遥散・桂枝茯苓丸の婦人科三大処方薬を使用します。症状だけでなく、体格や体質に合わせて処方します。

抗うつ・抗不安薬

症状によっては、抗うつ薬、抗不安薬を処方します。

生活習慣の改善

栄養バランスの整った食事、規則正しい生活リズム、十分な睡眠、ストレスの解消といったように、生活習慣の改善にも取り組みます。
自律神経を整え、症状を和らげる効果が期待できます。

更年期障害の対策

更年期障害の予防や治療においては、患者様ご自身でできることもあります。

有酸素運動でストレスを発散する

軽いジョギング、ウォーキング、水泳、ヨガ、ストレッチなどの運動は、ストレスの解消だけでなく、血行促進・自律神経の調整といった効果も期待できます。
多少の汗をかくくらいの、気持ち良く取り組める運動がおすすめです。

十分な睡眠時間を
確保する

日々の消費される体力・気力の回復だけでなく、自律神経のバランスを整えるためにも、質・量の十分な睡眠をとるようにしてください。

バランスの取れた食生活を心がける

タンパク質、ビタミン、ミネラルをたっぷり含んだ、バランスの良い食事を摂りましょう。
年齢を重ねて代謝も落ちてきていますので、暴飲暴食をしない・和食を中心にする・脂っこい物や塩分を控えめにするといった生活習慣病や肥満の対策も大切です。

漢方・サプリメントを
摂取する

自律神経の働きを整えるビタミンB1・B12、酸化やストレスへの抵抗性を高めるビタミンC、血行促進・ホルモンの調整をするビタミンE、エストロゲンに似た働きをするエクオール(大豆イソフラボン由来の成分)、ホルモンバランスを整える亜鉛など、食事で不足する場合にはサプリメントで補うのも有効です。
また漢方薬も、薬局などで購入が可能です。薬剤師に相談し、ご自身に合ったものを購入しましょう。

更年期障害の症状改善が
見込める食べ物

更年期障害の改善が期待できる食べ物についてご紹介します。

大豆製品

大豆製品豆腐、納豆、味噌などの大豆製品に多く含まれる大豆イソフラボンは、エストロゲンに似た働きを持ちます。大豆には、骨粗しょう症の予防になるカルシウムも豊富に含まれています。

たんぱく質

たんぱく質は、筋肉・血管・骨を作る栄養素であり、アミノ酸の原料にもなります。
更年期障害の改善のためには、筋肉量を増やしたり、日々の疲労をしっかりと取り除くことも大切になります。

食物繊維・発酵食品

急激な血糖値の上昇を抑えたり、便通を改善する働きの期待できる食物繊維、腸内細菌叢を整えてくれる発酵食品も、更年期障害の改善に有効です。

月経前症候群(PMS:Premenstrual Syndrome)

月経前症候群(PMS:Premenstrual Syndrome)生理前にイライラするなど、月経前に不快な症状を起こす状態です。働く女性の7~8割が体験するとされています。多くの人にみられる症状で珍しくありません。月経前の約3~10日前から始まる精神的・身体的症状が、月経開始とともに消失ないし減退していく症候群です。不安感・イライラ・むぐみ・腹痛などの不快な症状が現れて、月経がはじまると症状が消えていき、短期間にスッキリ症状がなくなります。はっきりとした原因はわかっていませんが、女性ホルモンの影響が指摘されています。治療には、産婦人科で処方されるホルモン薬、当クリニックでは向精神薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)など)、漢方薬(当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸など)を選択します。

月経前不快気分障害(PMDD:Premenstrual Dysphoric Disorder)

月経前不快気分障害(PMDD)は月経前症候群(PMS)と比較して、より精神症状又は身体症状が重いものをいいます。正常な月経周期を持つ女性の3~8%に症状があります。月経がはじまる1週間程度前から症状が現れて、月経がはじまるか、月経期間が終わるころには症状が改善します。症状が著しいため、仕事や生活に支障を大きく生じます。月経前不快気分障害は、ホルモン療法の効果が出にくい傾向があったり、うつ病や不安症などを同時に起こしている可能性もあります。精神科の専門治療により症状は改善できますので、このような症状が起こった場合は、当クリニックにお気軽にご相談ください。