物忘れ外来・MCI・認知症

高齢者の5人に1人がなる
認知症とは?

高齢者の5人に1人がなる認知症とは?認知症とは、脳の病気・障害などによって認知機能が低下する病気です。日常生活におけるさまざまな場面で支障をきたし、患者様だけでなく、そのご家族ご負担にもなってしまいます。
認知症は、年齢を重ねるほど、発症リスクが高まります。65歳以上に限って言うと、約5人に1人が認知症であり、私たちにとって身近な病気となっています。

認知症の1歩手前
「MCI(軽度認知障害)」

「軽度認知障害(MCI)」とは、認知症の1歩手前の状態を指します。
軽度認知障害の段階で治療を開始できれば、認知症への進行を予防したり、正常な状態に戻れる可能性があるのです。
軽度認知障害の特徴や初期症状については後ほどご紹介します。明らかな認知症ではなくとも、特徴や症状に当てはまると感じた時には、お気軽に当院にご相談ください。
ご家族からのご相談も承ります。

軽度認知障害(MCI)と
認知症の違い

軽度認知障害とは、認知症の特徴が見られるものの、診断基準を満たしていない状態を指し、いわゆるグレーゾーンに位置します。
軽度認知障害では、物忘れなどの軽度の認知機能低下が見られる一方で、自分がいる場所や現在時刻が分からない、料理など家事ができなくなるといった認知症に見られる症状、日常生活への支障はほとんどありません。

認知症・MCIの
初期症状チェック

認知症・MCIの初期症状チェック認知症・MCIの初期症状のチェックリストです。ご自身で、またはご家族によるチェックを行い、複数項目に当てはまる場合には、お早めに当院にご相談ください。

  • 会話の中で思い出せないことが増えた
  • 同じ話題・質問を繰り返すようになった
  • 忘れ物や探し物が増えた
  • 買い物に出かけたものの、何を買うのかを忘れてしまうようになった
  • 部屋の片づけや掃除を怠るようになってきた
  • 身だしなみ・外見を気にしなくなり、服装の選び方がちぐはぐになってきた
  • 家に閉じこもり何もしないことが増えてきた
  • 感情の起伏が以前より大きくなってきた
  • 病院等で処方された薬の飲み方を忘れる
  • 今まで普通にこなしていた家事ができなくなった
  • 不安や心配事が増え、眠れない日が増えた

 

MCI(軽度認知障害)の種類と特徴

MCI(軽度認知障害)は、以下のような2つのタイプに分けられ、それぞれ症状が異なります。

健忘型

物忘れを主な症状とします。
財布や鍵の場所が分からない、薬を飲み忘れるといったもので、加齢による物忘れと見誤り、受診が遅れがちです。放置していると、アルツハイマー型認知症に移行する可能性が高くなります。

非健忘型

物忘れがない一方で、言葉を忘れる・出てこない、道具がうまく使えない、注意力の低下といった症状が見られます。コミュニケーションには問題ないことが多く、やはりこちらも受診が遅れがちです。
放置していると、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症に移行する可能性が高くなります。

認知症の主な4つの種類と
特徴

代表的な認知症は4種類あります。
中でも多いのが、全体の7割近くを占めるアルツハイマー型認知症です。

アルツハイマー型認知症

脳の神経細胞でアミロイドβというたんぱく質が溜まることで、神経細胞を破壊し、脳が萎縮して発症する認知症です。加齢や遺伝に加え、糖尿病、高血圧なども発症リスクを高めることが分かっています。
物忘れのような症状から始まり、行動したこと・約束自体を忘れてしまうといったような記憶力の低下が見られます。進行すると、性格の変化、徘徊、失禁などの問題も現れます。

血管性認知症

脳卒中によって脳機能が障害されることで発症する認知症です。認知症全体の、約2割を占めます。
脳のどの場所が障害されるかによって、現れる症状が異なります。そのため、認知機能の低下だけでなく、運動麻痺、言語障害などを伴うこともあります。
脳卒中の原因としては、高血圧症・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病による動脈硬化がよく知られています。

レビー小体型認知症

レビー小体という脳神経細胞に異常なたんぱく質が溜まり、神経細胞が破壊されることによって発症する認知症です。
身体のこわばり、手足のふるえ、歩行障害・転倒しやすくなるといった症状に加え、幻視、抑うつ気分、睡眠時の異常行動などが見られます。認知機能の低下には変動が見られ、頭がはっきりしている状態とぼうっとしている状態を繰り返します。気分・言動が頻繁に変わるという特徴も見られます。

前頭側頭型認知症

脳の前頭葉や側頭葉前方が萎縮するという、他の認知症にはない特徴を持ちます。タウ蛋白やTDP-43といったたんぱく質が関与していることが分かっています。
万引きなど軽犯罪を起こす、相手を思いやれない、暴力・度を超した悪ふざけをする、同じことを繰り返す、感情が鈍くなる、自発的な言葉の減少、オウム返しなどの症状・問題行動が見られます。

その他の認知症

上記に挙げた以外に、嗜銀顆粒性認知症、神経原線維変化型認知症などの70代後半以降に好発する認知症や、アルコール性認知症、Treatable dementia(治療できる認知症)として正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下、ビタミンB12欠乏症、葉酸欠乏症、薬剤性認知症などが存在します。

認知症・MCIの原因

認知症の原因

はっきりと解明されていない部分も少なくありませんが、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病は、アルツハイマー型認知症や血管性認知症のリスクを高めます。またアルツハイマー型認知症は、加齢や遺伝も発症に影響します。

MCIの原因

MCIの原因についても、完全な解明には至っていませんが、基本的に認知症と共通した原因があると考えられます。
また、MCIだと思っていたら実はうつ病であった、甲状腺機能低下症であったというケースもあります。必ず、専門の医療機関で診断を受けるようにしましょう。

認知症・MCIの治療法

認知症やMCIの治療では、以下のようなことを行います。

精神療法

患者様、ご家族とのカウンセリングを通して、抑うつ気分、不安、孤独感を軽減する治療です。
認知症であっても希望のある人生を歩むことは可能であること、またMCIであれば改善の可能性もあることを確認し、治療の原動力とします。

生活療法

細胞の再生を図るための栄養療法、血流を改善するための運動療法を行います。
生活習慣病の改善や予防という意味でも有効です。

家族療法

特に介護をするご家族に向けて行います。
認知症自体や治療についての理解を深めたり、肉体的・精神的負担を軽減するための支援・アドバイスを行います。

認知症予防トレーニング

「食事」「運動」「脳トレ」からアプローチする、認知症を予防するために交換されたトレーニングを行います。

薬物療法

作用の異なる抗認知症薬の中から、患者様に合ったお薬を選択し、処方します。副作用を最小限に抑えるためにも、時間をかけて、薬物療法を進めていきます。
必要に応じて、お薬はご家族に管理していただきます。

アルツハイマー型認知症の新薬「レカネマブ(商品名レケンビ)」は当院では取り扱っておりません。

MCI(軽度認知障害)を
回復させるには

MCI(軽度認知障害)を回復させるには繰り返しとなりますが、MCIの段階で適切な治療を行うことで、進行を大幅に遅らせたり、元の状態に戻したりすることが可能になります。健常に戻る割合は、実に30%にものぼります。
反対に、MCIを放置していると、1年後に10%が、4年後には40%が認知症へと移行することが分かっています。
MCIで見られる症状は、気づきにくいものがほとんどです。ご自分で、あるいはご家族様が「おかしいな」と感じた時には、念のためにというつもりで、お気軽に当院にご相談ください。