神経症・不安症(強迫性障害(強迫神経症)・社会・社交不安障害・パニック障害)

不安が引き起こす
「神経症」

不安が引き起こす「神経症」神経症とは、過度の不安などの心理的な原因によって、器質的な問題がなく心身に機能障害をきたす状態を指します。強い不安があることが特徴的であり、その不安をコントロールできないために、心身の症状が現れます。不安神経症、強迫神経症がよく知られています。
かつては場合一般に「ノイローゼ」と呼ばれていました。

神経症と精神病の違い

神経症では通常、妄想や錯乱、幻覚といった症状は見られません。また、入院が必要になるケースもごく稀です。うつ病と比べた場合も、神経症の症状は日常生活への影響は比較的小さくなります。
ただ、神経症の人がうつ病などの精神疾患を併発することもあるため、神経症だから大丈夫・治療が必要ないというわけではありません。

不安神経症
(全般性不安障害)

神経症のうち、不安や恐怖といった感情が過剰となり、日常生活に支障をきたしている状態を指します。
感情のバランスが崩れることで、一般的に感じられると思われる程度を超えた、強い不安や恐怖に見舞われます。

不安神経症の
症状チェック

  • 日常的に不安感がある
  • イライラすることが増えた
  • 考えが頭から離れない
  • 不安感から同じ行動を繰り返してしまう
  • 吐き気がする
  • 突然汗をかく
  • 身体が震える
  • めまい、ふらつき、頭痛がする

不安神経症の原因

強い不安、精神的ショック、深い悩み、過度の緊張など、心理的ストレスが主な原因と考えられます。また、過労、睡眠不足、体調不良などの身体的ストレスが原因となることもあると言われています。
はっきりとした原因については、未だ解明し切れていないというのが現状です。

不安神経症に
なりやすい人

原因や過去の症例から、以下のような人は、そうでない人よりも不安神経症になりやすいと言えます。

  • 心配性の人
  • 完璧主義、神経質な人
  • 過敏症の人
  • 女性(発症率が男性の2倍以上)

不安神経症の
診断方法

ICD-10やDSM-5に基づいた診断を行います。
問診の際には、症状、経過、生活状況、自覚する不安やストレスなどについてお伺いします。
他の病気を除外するため、血液検査や心電図検査、脳波検査などを行うこともあります。

不安神経症の治療

感情のバランスを取り戻し、不安を必要以上に大きく捉えないようにすることが大切です。
主に、認知の歪みを自覚・修正する認知行動療法、抗不安薬や抗うつ薬を用いた薬物療法などを行います。
再発防止の意味でも、不安の原因についてもできる限り取り除いたり、対処法を身につけたりする必要があります。

強迫神経症
(強迫性障害:OCD)

強迫神経症(強迫性障害:OCD)強迫神経症とは、自分でもおかしいと自覚しながら、ある考え(強迫観念)を持ったり、ある行為(強迫行為)を繰り返してしまう状態を指します。
1つ例を挙げると、自分の身体が実際以上に汚れていると考え(強迫観念)、肌がカサカサになるまで手を洗う・お風呂に入る(強迫行為)といったものとなります。
自分でやめようと思っても難しく、約束や仕事に遅れたりして周囲の人からの信頼を失ってしまったり、奇異の目を向けられたりすることがあります。

強迫神経症の症状
チェック

  • 汚れや細菌・ウイルスへの過剰な恐怖が生じ、手洗い・入浴・洗濯などを繰り返す
  • 鍵やガス栓の閉め忘れ・電気機器の消し忘れがあると思い込み、何度も自宅へ戻って確認する。また確認の際には過度の指差し確認をする・手で触って確かめる
  • 誰かに危害を加えた・事故を起こしたかもしれないと思い込み、ニュースを隅々までチェックする。または警察や知人に確認する
  • 自分の決めた手順で物事を進めないと恐ろしいことが起こるという不安があり、どのような状況であってもその手順を守ろうとする・臨機応変に対応できない
  • 幸運/不吉な数字への強いこだわりがあり、その数字を見つけるまで探し続けてなかなか帰宅できない
  • 物の配置に強いこだわりがあり、少しでも違う配置を見ると直さずにいられない
  • 強迫観念が強く、上記のような行為を家族など親しい人に手伝わせようとする(主に女性)
  • 不適切であることを自覚しているため、上記のような観念・行為を隠そうとする

強迫神経症の原因

はっきりとした原因は解明されていませんが、性格、生育歴、ストレスなどさまざまな因子が重なり、脳内のセロトニンという神経伝達物質の働きに異常をきたすことで、強迫観念・強迫行為が生じるものと考えられます。
また、前頭葉の血流の障害が発症に影響するとの指摘もあります。

強迫神経症に
なりやすい人

考えられる原因として挙げた通り、強迫性神経症になりやすい性格というものが指摘されています。

  • 責任感が強い人、真面目な人
  • 完璧主義の人
  • 潔癖の人
  • 神経質な人、几帳面な人
  • リーダー気質の人

強迫神経症の
診断方法

問診にて、症状(強迫観念・強迫行為)、症状による実生活での弊害、自覚している性格、生育歴・既往歴、服用中の薬などについて詳しくお伺いし、総合的に診断します。

強迫神経症の治療

セロトニンの働きの異常が原因であることから、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を使った薬物療法が有効になります。
また、認知の歪みを医師の助けを借りながら自覚・修正する認知行動療法も行います。

不安でたまらない
「不安症(不安障害)」

不安症とは、不安を主な症状とする症候群の総称です。強い不安、つきまとう不安によって、日常生活に支障をきたします。
社交不安障害、パニック障害がよく知られています。

社交不安障害
(社会不安障害)

人前に出る・喋る、会食をするといった場面で極端に緊張し、心身に症状が現れます。またそのため、そのような場面を回避する行動をとります。誰でも人の目があると多少は緊張しますが、社交不安障害の方は耐え難い緊張・苦痛・恐怖を感じ、人と関わることに困難が生じます。

社交不安障害の
症状チェック

  • 赤面
  • 動悸
  • 手足の震え
  • 冷や汗をかく
  • 頭が真っ白になり、思うように話ができない

社交不安障害の原因

脳内のセロトニンが何らかの影響でバランスを失い、神経が過敏になることで、症状を引き起こします。なぜそのようなことが起こるのか、はっきりとした原因は解明されていませんが、性格、生育歴などが関係しているものと考えられます。

社交不安障害に
なりやすい人

以下のような性格・生育歴を持つ人は、そうでない人と比べると、社交不安障害のリスクが高くなると思われます。

  • 内気な人、シャイな人
  • 真面目な人
  • 自分に厳しい人、自己評価の低い人
  • 厳しいしつけを受けて育った人
  • 愛情をたっぷり受けて育った人
  • 心的外傷のある人

社交不安障害の
診断方法

問診では、症状、症状による実生活での弊害、自覚している性格、生育歴・既往歴、服用中の薬などについてお伺いします。診断の際には、以下のようなポイントを確認します。

  • 強い不安、悩み、心配事を抱えている
  • 強い不安、それに類する症状が現れている
  • イライラ、怒りっぽさがある
  • 症状によって、日常生活に支障をきたしている
  • 他の精神疾患ではない

他の病気との鑑別のため、血液検査、心電図検査などを行うこともあります。

社交不安障害の治療

社交不安障害の治療では、主に薬物療法、認知行動療法を行います。

薬物療法

セロトニンを増やすためのSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、不安・緊張を和らげる抗不安薬などを使用します。また、動悸や震えがある場合には、βブロッカーが有効です。

認知行動療法

強い不安があると、気づかないうちに、さまざまな場面で考え方に偏りが生じます。認知行動療法でその認知の歪みを、医師の助けを借りながら自覚・修正し、物事の前向きな捉え方ができるよう誘導します。

パニック障害

パニック障害原因の分からない激しい不安に突如襲われ、動悸、呼吸困難、めまいなどの症状が現れます(パニック発作)。パニック発作を一度経験すると、再度発作が起こるという恐怖から、さらに不安が増大するという悪循環に陥ってしまうことがあります。

パニック障害の
症状チェック

  • 動悸
  • 息苦しさ、呼吸困難
  • めまい
  • 吐き気、嘔吐
  • 発汗
  • 血の気が引く
  • 胃痛、腹痛
  • 自分が自分でないような感覚
  • このまま気が狂う、死んでしまうという恐怖

パニック障害の分類

パニック発作

突然、動悸、息切れ、呼吸困難などの症状に見舞われます。自分が自分でないような感覚、気が狂う・死んでしまうという恐怖に襲われてしまうこともあります。

予期不安

パニック発作が起こるかもしれないという懸念から、常に強い不安を抱きます。

広場恐怖

予期不安が重くなると、パニック発作が起きた時に逃げ出せない場所・助けてもらえない場所がこわくなり、そこに行けない(電車などに乗れない)、あるいは出社や外出ができないといった状態になります。

パニック障害の原因

はっきりとした原因は分かっていませんが、自律神経をコントロールする脳幹部、情動などを司る大脳辺縁系、前頭葉などの異常が影響し発症につながるとの指摘があります。
その他、体質的な異常、ストレスなどの関与も考えられます。

パニック障害に
なりやすい人

以下に該当する人は、そうでない人よりもパニック障害を発症するリスクが高くなると言われています。

  • 内気な人、シャイな人
  • 不安、恐怖を感じやすい人
  • 幼少期、親と離れることに強い不安があった人
  • 高所、閉所、動物などに恐怖を感じる人
  • ストレスを抱えている人

パニック障害の
診断方法

DSMやICDなどの診断基準などを用いますが、症例によって病態は異なりますので、慎重な診断が求められます。
問診では、パニック発作・予期不安・広場恐怖といった分類ごとの症状、実生活への影響、既往歴、服用中の薬などについて詳しくお伺いします。できる限り患者様のご負担にならないような検査・診断をいたしますので、安心してご相談ください。

パニック障害の
治療法

薬物療法、精神療法を主に行います。

薬物療法

主に、抗うつ薬を使用します。
またどうしても辛い時など、限定的に安定剤を使用することもあります。

精神療法

パニック障害について正しい知識を得る心理教育、認知の歪みを自覚・修正する認知行動療法などを行います。