適応障害

適応障害とは

適応障害とは適応障害とは、自分の置かれた環境にうまく適応できないことがストレスとなり、抑うつ気分、不安感が強くなったり、出社拒否・不登校、対人トラブルなどで社会生活に支障が出ている状態を指します。
原因となる“環境”には、職場・学校・家庭などが挙げられます。原因を解決する・原因から離れることで改善が期待できますが、実際には解決したり離れること自体が困難であるケースが多く、個々の病状・事情に合わせた治療や支援が必要となります。

元気に見えても
適応障害?
症状について

適応障害では、以下のような症状、問題行動が見られます。先述の通り原因となる環境から離れている間はこれらの症状、問題行動は比較的抑制されます。たとえば仕事のストレスを原因とする場合、退勤後や休日には元気で過ごす、というケースもあるのです。ただ、こういった特徴によって、受診が遅れてしまうということもあります。

  • 抑うつ気分
  • 強い不安感、焦燥感
  • 緊張
  • 怒り
  • 多汗
  • めまい
  • 暴飲暴食
  • 無断遅刻、無断欠席
  • 出社拒否・不登校
  • けんか
  • 無謀運転

適応障害とうつ病の違い

適応障害とうつ病は、どちらもストレスを原因とし、引き起こされる症状、問題にも似た点があります。
一方で、以下のような明確な違いもあります。

罪悪感や
自責の念について

適応障害では、うつ病でよく見られる、罪悪感や自責の念はあまり認められません。

問題行動について

適応障害では、不安感の強さから、突然大声を出したり、泣き出したりといった感情や気分のムラが激しいという特徴があります。このムラは、うつ病ではあまり見られません。

ストレスを伴う
環境から離れた時

適応障害では、ストレスの原因となる環境(職場・学校・家庭など)から離れることができれば、比較的明るく元気に過ごすことができます。一方のうつ病では、ストレスの原因から離れたり、解放されたからといってすぐに症状は改善しません。

適応障害でみられる
顔つきの変化

健康な人であっても、気分や状況によって顔つき・表情は変わります。
適応障害の人も、抑うつ気分、強い不安感、焦燥感、緊張、怒りなどから、以下のような顔つきや表情が見られることがあります。

適応障害の方に
よく見られる顔つき
・表情

  • 顔色が悪い
  • ぼーっとした顔つき
  • 無表情
  • 元気がなく、無理な作り笑い

適応障害の原因

適応障害の原因は、その環境に適応できないことで生じるストレスにあります。
仕事、学校、家庭などの環境に慣れることができず、強いストレスを感じることで、心身にさまざまな症状が現れます。
特に、就職・転職・転勤、進学・転校、結婚・離婚、転居など、環境が大きく変化した時に発症のリスクが高くなると言われています。

適応障害になりやすい人
の特徴

適応障害になりやすい人の特徴適応障害になりやすい性格や特徴、私生活・仕事における適応障害のきっかけについて、ご紹介します。適応障害の原因であるストレスを受けやすい・大きく感じてしまう性格は、適応障害のリスク因子となります。

  • 真面目
  • 責任感が強い
  • 完璧主義、几帳面
  • 他人の視線や評価が気になる
  • 批判される・叱責されるとひどく落ち込む
  • 人からの頼み事を断れない
  • 人を頼れない、何事も自分で解決しようとする
  • 心配性
  • 気持ちの切り替えが苦手
  • 繊細で変化に敏感
  • 正義感が強い
  • 自分よりまわりの人のことを優先してしまう
  • 空気を読むのが苦手

私生活が原因で
適応障害になる場合

家庭や学校生活を含む私生活においては、以下のような環境がストレスとなり、適応障害を発症するケースが目立ちます。一般的にポジティブに捉えられる環境(結婚・進学など)も、場合によっては適応障害のきっかけになることがあります。

  • パートナーなど家族との不仲
  • 失恋・離婚
  • 結婚・同棲
  • 転居
  • 進学・転校
  • 育児、教育での悩み
  • 経済的不安
  • いじめ、DV
  • 受験、就職活動の失敗
  • がんなどの疾患、その治療
  • 災害

仕事が原因で
適応障害になる場合

仕事に関連する以下のような環境も、ストレスとなり適応障害を引き起こすことがあります。
私生活の場合と同様、一般的にポジティブに捉えられる環境(昇進・栄転など)が適応障害のきっかけになるケースも見られます。

  • 就職・転職
  • 転勤・部署移動
  • 大きなミス、上司からの叱責
  • 業務内容のミスマッチ、やりがいのなさ
  • 新入社員、管理職としてのプレッシャー
  • 残業・休日出勤の常態化
  • パワハラ、モラハラ、セクハラ

適応障害の診断基準

ICD-10、DSM-5などの診断基準がありますが、基本的に以下の条件を満たした場合に、適応障害と診断します。ストレスの原因が明確であり、その原因から離れることで改善・回復するということが最大のポイントとなります。

  1. ストレスの原因が明らかで、そのストレスを感じてから3カ月以内に症状が出た
  2. ストレスにより強い苦痛を感じている、もしくは生活に支障が出ている
  3. その他の精神疾患や、大切な人を亡くした喪失感によるものではない
  4. ストレスの原因がなくなると改善し、6カ月以内に回復する

適応障害の治し方

適応障害の治し方適応障害の主な治療法について、ご紹介します。

薬物療法

症状に応じて、睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬、気分安定薬などを処方します。あくまで対症療法となりますが、認知のゆがみを改善する手助けにもなります。

カウンセリング

カウンセリングでは、認知行動療法などを行います。
うつ状態になったり不安が強いと、さまざまな物事に対して悲観的になる傾向があります。物事の捉え方に偏りがある場合にはそれを医師の助けを借りながら自覚し、修正します。

ストレスのもとになる
環境を変えてみる

ストレスの原因から離れる、あるいはできるだけ離れることで、症状の改善が期待できます。
たとえば仕事を原因とする場合、退職すれば症状の改善ができますが、簡単な決断ではありません。また、収入がなくなり、新たなストレスが生まれる可能性もあります。部署移動、短時間勤務、休職など、柔軟なリスクの少ない方法を、会社側と相談しながら検討します。
診断書が必要な場合には、お気軽にご連絡ください。

適応障害は完治できる?

適応障害は、ストレスの原因から離れることで、十分に完治が可能です。また、ストレスの原因への対処法を身につけることで、症状の改善、あるいは完治が期待できます。
ただ、人はどのような環境であっても、大なり小なりのストレスを感じます。完治したからといって再発しないわけではなく、一度適応障害になった人はその後も再発しないよう、環境を整えることが大切になります。
原因への対処法を身につけること、ストレスの解消方法を身につけておくことも、再発予防に役立ちます。